お役立ちコラム
魚を食べてこころもからだも元気に!
~EPAとうつ~更新日:2024/05/22
魚油に含まれる栄養成分として知られているEPA(エイコサペンタエン酸)。健康面において様々な良い効果が分かっており、うつとの関連にも注目を集めています。
今回はEPAとうつの関係が気になる方に向けて、関連する研究報告やEPAの特徴、EPAを多く含む食材などについて説明します。
EPAとうつの関係
EPAは、うつのリスク低下に関係する研究が行われている栄養素です。
ここでは3つの研究を例に挙げて、うつとEPAの関係について説明します。
魚介類を1日111g食べるグループでうつのリスクが低下
疫学調査を統合解析した報告によると、うつの人は、そうでない人よりもEPAやDHA(ドコサヘキサエン酸)、α-リノレン酸といったn-3系多価不飽和脂肪酸の血液中の濃度が低いことがわかりました※1)。
n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量別に4つのグループに分けて、1日に57.2gの魚介類を食べるグループと111.1gの魚介類を食べるグループを比較すると、後者においてうつのリスクの低下がみられたのです。
ただし、魚介類を多く摂るほどうつのリスクが低下するというものではなく、ある一定量の摂取がうつのリスク低下に重要であることが示唆されています。
中高年者のEPA・DHA 摂取とうつのリスク低下との関連
40歳以上の男女2,123人を対象に、NILS-LSA(国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)によってEPA・DHAとうつのリスクの調査が行われました。
血液中のEPA濃度が低いグループ(31.9μg/ml)と濃度が高い2つのグループ(92.2μg/ml・131.2μg/ml以上)では、血液中のEPA濃度が高いグループの方がうつのリスクが低いことがわかりました。
この結果により、うつのリスクの低下にEPAが有効であることが示唆されました※2)。
うつの発症には年齢・性別・高血圧・心疾患など様々な要素が関係しています。この研究ではそのような他の要素による影響も調整された上で、以上のような結果が示されました。
n-3系多価不飽和脂肪酸の抗炎症作用と抗うつ効果
n-3系多価不飽和脂肪酸の中でもEPAの抗炎症作用に着目した総説があります※3)。
これまで行われてきた臨床試験やそれらを統合解析した報告によると、血液中の炎症性マーカーの値が高いなどの炎症が関係しているうつ病の患者においてEPAが有効でした。
以上から、EPAによりもたらされるうつの改善のメカニズムには、抗炎症作用が関係しているのではと考えられています。
また、n-3系多価不飽和脂肪酸は抗炎症のみならず神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの代謝に影響を与えることで抗うつ効果をもたらしている報告もあり、うつに対して様々な機能を持っているといえます。
EPAってどんな栄養成分?
EPA(エイコサペンタエン酸)は主に魚に含まれる栄養成分ですが、特に青魚の油に多く含まれ、DHAやα-リノレン酸と同じn-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3系脂肪酸)に分類される脂肪酸です。
EPA には、アレルギーなどの炎症を抑える作用、血液をサラサラにする作用、認知機能を改善させる作用、精神安定に関係する神経伝達物質であるセロトニンの増強効果などがあるといわれています。現在も、うつだけでなく不安障害やパニック障害、自律神経との関連についても研究が進められています。
健康において大切な役割を担っているEPA ですが、体内では作ることができない必須脂肪酸です。毎日の食事から摂取する必要があります。
EPAは何にどれくらい含まれているの?
EPAは主に、以下のような魚介類に多く含まれています。
ほんまぐろを例に挙げると、EPAの含有量は赤身だと可食部位100gに対して27mg、脂身では1,400mg※4)と大きな差があります。EPAはトロのような脂身、魚の油の部分に多く含まれていることがよく分かる例といえるでしょう。
EPA・DHA・α-リノレン酸といったn-3系多価不飽和脂肪酸の1日あたりの摂取は、日本人の食事摂取基準で目安量として、成人女性なら1,600〜2,000mg、成人男性であれば2,000〜2,200mgが示されています※5)。これを意識しておくとよいでしょう。
EPAで内側から元気に
EPAは青魚に多く含まれる必須脂肪酸です。
人の体内では炎症やアレルギーを抑制する作用や血液をサラサラにする作用があり、うつのリスク低下に役立つことを示唆する報告もあります。
一方で、血液をサラサラにする作用があるということは必要以上に摂取することで血液が固まりにくくなることも懸念されます。出産などのライフイベントを控えた方やその他の方も安心して摂取するためには医師に相談することが大切です。
これからも元気に過ごしていくために、EPAの摂取を心がけてみてくださいね。
(参考文献)
※1)Matsuoka YJ, et al. Transl Psychiatry. 2017; 26: 7(9)
※2)Horikawa C, et al. Br J Nutr. 2016; 115(4):672-80.
※3)西大輔. 日本生物学的精神医学会誌 29(4):177-181, 2018
※4)日本食品標準成分表(八訂)増補2023年脂肪酸成分表編
※5)「日本人の食事摂取基準(2020年版)