お役立ちコラム
仕事なのに眠れないまま朝になった!
~緊急の対処法や食事改善を解説~更新日:2025/07/18
忙しい都市生活を送るオフィスで働くの皆さんにとって、睡眠不足は厄介な問題です。特に、仕事や生活のストレスが重なる30代から50代の働く男女に多く見られる悩みではないでしょうか。
「眠れないまま朝になって気持ち悪い」
「一睡もできなかったけど大丈夫かな?」
今回はこのような方に向けて、眠れないまま迎える朝の緊急対処法から、日常生活で取り入れるべき予防策、そして食事による睡眠改善のヒントまで、さまざまなアプローチを掘り下げていきます。生活の中で簡単に実践できる方法を知り、睡眠を改善し、健康的な生活を目指していきましょう。
緊急でできる対処法4つ
手軽に頭をすっきりさせる方法として思い浮かびやすいのが、コーヒーを飲むことではないでしょうか。
私たちは眠くなるときに脳内でアデノシンという生理物質が睡眠を誘導します。それに対してコーヒーに含まれるカフェインが作用を妨げるため、コーヒーを飲むことで眠気が抑えられます。※1)
しかし、この働きによりコーヒーの過剰摂取や長期摂取が原因で眠れなくなってしまうこともあります。体への影響、依存の問題を考慮してカフェインの摂取はあくまで一時的なものとして頼り過ぎないように注意が必要です。
そこで、緊急時にすぐ実践できる対処法として、以下をご紹介します。
・ストレッチや深呼吸をする
・朝日を浴びて散歩をする
・シャワーを浴びる
・ツボを押す
ストレッチやゆっくりと深呼吸をすることは手軽な眠気対策として挙げられます。
眠気対策にはじっとしているより身体を動かした方が効果的です。
そして、朝の時間に余裕があるときには朝日を浴びて体内時計をリセットし、軽く散歩をしながら体を目覚めさせるとよいでしょう。心地よいシャワーを浴びることも、目を覚ますための有効な手段です。
時間や体を動かすスペースなどがない方は、目を覚ますツボとして知られる神門・三陰交・山根・天柱を押してみてください。これらのツボを押すことで血行促進を促し、集中力が高まることが期待できます。
睡眠不足では普段とは感じ方が異なりイライラする場合があるため、乗り物の運転などには注意が必要です。また、会話ではいつもより慎重な言葉選びをおすすめします。
日常生活でできる予防策5つ
緊急でできる対処法とともに、不眠の原因になる習慣がないか日常生活を振り返ってみましょう。そして、無理のない範囲から予防策を取り入れてみましょう。
ここでは以下について順番に説明します。
・朝日を浴びる
・入浴は就寝の90〜120分前にする
・睡眠環境を整える
・アルコールや喫煙を控える
・食事の時間帯や内容を見直す
日常のルーティンとしては、朝日を浴びて体内時計を整え、夜は寝る90〜120分前に入浴することで体温を調節しましょう。
また、寝るときの睡眠環境を整えることも大切です。快適なパジャマやシーツを選び、リラックスできる空間を作り、寝る前のアロマ、読書、腹式呼吸を行い、そして、就寝前の電子機器の使用を制限することなどがおすすめです。アルコールやタバコの摂取を減らすことも重要です。
さらに、食事を摂る時間も大切です。
就寝前1時間未満に食事を摂った場合、3時間未満に比べ睡眠の質が低下し、眠りについた後、翌朝起床するまでの間に何度も目が覚めやすくなることも報告されています※2)。
カフェインの睡眠への影響を考慮して就寝の少なくとも 6 時間前には大量のカフェイン摂取を控える等※3)、一日のリズムを整えることが大切です。
また、睡眠時間が短い人は食生活の質が低いことも報告されており※4)、食事の内容は睡眠と深い関係があると考えられます。
良い睡眠のための食事にはまずこの3つ
次の成分は睡眠の質を改善させるのに役立ちます。
・n-3系多価不飽和脂肪酸
・ビタミンD
・トリプトファン
睡眠の質を改善する鍵は、日常の食事にあります。
魚の摂取量と睡眠の質は関係している
デル・ブルットらは2016年にエスカドル在住の40歳以上の健康な成人において脂がのった魚の摂取量が睡眠の質と正の相関関係があることを報告しました。※5)
そして、2024年には清水らにより魚油に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸において、睡眠の質の改善に寄与していること※6)、魚が主な供給源の一つであるビタミンDにおいても、その不足が睡眠の質の低下や日中の過度な眠気に関連していることが報告されています。※7)
これらの結果により睡眠の質の改善には魚の摂取が重要であると考えられます。
ビタミンDは魚類以外にも直射日光に当たることで皮膚にて合成されるものの、屋内で窓越しに日光に当たってもビタミンDは生成されません※8)。 ビタミンDは日本人に不足しがちな栄養素との報告もあり、屋内で過ごすオフィスワーカーの皆さんは積極的にビタミンDを多く含む食品やサプリメントを取り入れるのがよいでしょう。
トリプトファンにより睡眠の質は向上する
腕時計型のウェアラブルデバイスによる客観的な睡眠評価法を用いたトリプトファン摂取の結果が2019年にオランダのヴァン・ダルフセンらにより報告されました。その報告によると、トリプトファンが入ったサプリメントを摂った人はトリプトファンが入っていない偽サプリメントを摂った人と比べて睡眠効率が有意に上昇することが明らかになりました。※9)
トリプトファンは体内で合成できない必須アミノ酸の一つであり、トリプトファンを原料に神経伝達物質のひとつである「セロトニン」が生成されます。※10) そして、セトロニンから「メラトニン」が生成されます。メラトニンは生体リズムの調整に重要な役割を担っており、睡眠・覚醒リズムなどの概日リズムを調整することで※11)、穏やかな睡眠を導く働きをすると考えられます。
トリプトファンを多く含む食品の中で手軽に摂れる牛乳やヨーグルトを朝食の習慣にすることをおすすめします。また、バナナにもトリプトファンが含まれており、乳製品と相性の良いことから一緒に摂るのもおすすめです。
もしかすると自分を見つめ直す時?改善しない方は病院へ!
眠れない上に発熱・激しい頭痛・倦怠感・めまい・ふらつきといった症状を伴い、気持ち悪いと感じる場合は、無理をせず仕事を休むことも考えるべきです。
これを機会に、自分のライフスタイルを見直しストレスの原因を考えてみましょう。ストレスは一人で抱え込まずに周りの人に相談することも対処法の一つです。
様々な対策を講じても改善しない場合は、医師の診察を受ける時期かもしれません。強い疲労感や倦怠感が日常的にあり、仕事に支障が出ているならば、早めの受診がおすすめです。
不眠を改善して健全で自分らしいライフスタイルへ
日々の仕事に全力で向き合える方ほど、ストレスは感じやすいものです。ストレス自体は困難や目標を乗り越えるために必要なものですが、夜も眠れないほどのストレスは不眠をはじめ様々な支障をきたすことになります。「休むと周りに迷惑かも」と思う気持ちもあるかもしれませんが、まずはご自身の状態を整えましょう。
もしも眠れない日々が続く場合があれば、専門医の診断を受けることも大切です。
これ機会に生活習慣を見直し、不眠を改善して健全で自分らしいライフスタイルの第一歩を踏み出してくださいね。
(参考文献)
※1)ZL Huang, et al. Int Rev Neurobiol. 2014:119:349-7
※2)SI Iao, et al. Br J Nutr. 2021 Sep 13;127(12):1-10.
※3)C Drake, et al. J Clin Sleep Med. 2013 Nov 15;9(11):1195-200.
※4)J Theorell-Haglöw, et al. J Clin Sleep Med. 2020 Jan 15;16(1):9-18.
※5)OH Del Brutto, et al. Sleep Med. 2016 Jan:17:126-8.
※6)K Shimizu, et al. J Clin Biochem Nutr. 2024 Nov;75(3):204-212.
※7)Q Gao, et al. Nutrients. 2018 Oct 1;10(10):1395.
※8)大野 智. ビタミンD (厚生労働省「統合医療」情報発信サイトeJIM)2021.3.12
※9)JH van Dalfsen, et al. J Psychopharmacol. 2019 Aug;33(8):948-954.
※10)西 大輔. セロトニン(厚生労働省e-ヘルスネット)2021.1.22
※11)三島 和夫. メラトニン(厚生労働省e-ヘルスネット)2024.2.1