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亜鉛は前を向いていきたい人におすすめの栄養素!
~亜鉛とうつ~更新日:2024/07/10

コラム

亜鉛は体内では作ることができない必須元素で、心にも良い影響があると考えられている栄養素です。
神経伝達のサポートや味覚の維持など、亜鉛は人の生命活動に欠かせないものですが、日常生活で亜鉛の摂取を気にされている方はあまり多くないかもしれませんね。
今回は亜鉛とメンタルの関係が気になる方に向けて、亜鉛とうつの関係や、亜鉛の働き、亜鉛を多く含む食材などについて説明します。

亜鉛とうつの関係

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亜鉛とうつに関する研究や調査について紹介します。
いずれも更なる検証が必要ですが、亜鉛を摂ることによってうつやその症状が進行したうつ病の改善に良い影響があると期待されています。

亜鉛の摂取量が多いとうつ病の罹患リスクが低い

中年以上のオーストラリアの方々を対象とした研究で、亜鉛の摂取量ごとに5段階にグループ化したところ、最も亜鉛の摂取量が多いグループは、亜鉛の摂取量が最も少ないグループに比べ、うつ病を罹患する確率が約30〜50%少ないことが報告されました※1)。
また、亜鉛は体内に取り込まれる時に鉄と干渉しあうことが知られていますが、この研究では亜鉛の摂取量に基づくうつ病の罹患リスクの低下には亜鉛と鉄の比率は影響がなかったと報告されています。

亜鉛の補充はうつ病の改善に良い

抗うつ薬と併用するサプリメントの亜鉛配合の有無とうつ病の重症度

うつ病の患者に対して、抗うつ薬と1日あたり25mgの亜鉛が入ったサプリメントを併用した6名と、抗うつ薬と亜鉛が入っていない偽サプリメントを併用した8名と比較したところ、亜鉛が入ったサプリメントを併用したグループのほうがうつ病の重症度が低く、改善度合いが大きかったという研究報告があります。
この研究は参加者が少ない予備試験であるため、より大規模な試験を行う必要があるものの、開始6週目から顕著な重症度の改善度合いに差が出始め、12週目でも継続して同様の差がみられたと報告されています※2)。
また、今まで実施されてきたうつと亜鉛サプリメントに関する臨床研究を調査し分析した報告においても、亜鉛の補充がうつの改善に有効なことが示唆されています※3)。

うつとミネラルの関係

19~69歳の日本の製造会社の就労者男女2,006人の食事とうつの発症リスクの関係を評価した研究報告によると、マグネシウム・カルシウム・鉄・亜鉛といったミネラル類の摂取量ごとに3段階にグループ化したところ、最も摂取量が多いグループは、摂取量が少ないグループよりもうつの発症リスクが低いことがわかっています※4)。
これらのミネラルは、ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神の安定化に関係するセロトニンという神経伝達物質の合成に関わっています。
ドーパミンは喜びや快感を伝える神経伝達物質であり、ノルアドレナリンは恐怖や驚きなどを伝える神経伝達物質です。
セロトニンの低下が起こると、この2つの神経伝達物質のバランスが不安定になるため、うつや不安、パニック障害、攻撃性が高まるなどの精神症状が現れると考えられています※5)。
本研究は日本の製造会社の就労者といった限られた人での報告であることから、うつとミネラルの関係については更なる検証が必要です。

亜鉛ってどんな栄養素?

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亜鉛は生物が生きるために必要な必須元素の一つで、成人の体内には約2gの亜鉛が含まれています。
人の体内では200種類以上の酵素が機能するのに亜鉛が必要といわれており、うつ以外では神経伝達や自律神経のサポートや免疫機能や代謝機能や心血管機能の維持、感覚器や皮膚や髪の健康維持などに関係しています。※6)
また、亜鉛が不足した場合には、傷の治癒が遅れることや、味覚異常、その他、生殖機能の低下が起こることも知られています。
脳の神経においては、BDNF(脳由来神経栄養因子)の産生や、グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体の伝達抑制に亜鉛が関係しています。
BDNFは精神疾患や発達障害の治療に関心が持たれている液性たんぱく質であり、グルタミン酸は脳の活性化や認知機能、気分の制御に関係している栄養素です。
BDNFやグルタミン酸は神経細胞の分化や成長、神経伝達に必要であるため、これらに関与する亜鉛は神経の活動においても大切な栄養素だといえるでしょう。

亜鉛は何にどれくらい含まれている?

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亜鉛を多く含む食品として代表的なものは以下の通りです。

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亜鉛はたんぱく質を含む食品に含まれ、魚介類や肉類に多く含まれます。植物性食品では豆類やナッツ類に多く含まれます。
日本の国民の健康の維持・増進を目的に設定されている食事摂取基準(2020年版)によると、1日あたりの亜鉛の推奨量は、18〜75歳以上の女性で8mg/日、妊婦の方は10mg/日、授乳中の方で12mg/日、男性の場合は18〜74歳で11mg/日、75歳以上で10mg/日とされています。
健康を保つためには毎日推奨量の亜鉛を摂ることが理想です。また、一日に多量に亜鉛を摂ることは過剰摂取に繋がることから耐容上限量も示されているため参考にしましょう。
亜鉛の耐容上限量は、女性で18〜74歳の方は35mg/日、74歳以上の方は30mg/日まで、男性では18〜29歳と65歳以上の方は40mg/日、30歳〜64歳の方は45mg/日です。

亜鉛は前を向いていきたい人におすすめの栄養素

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亜鉛はうつだけでなく、傷の回復や味覚の維持、生殖機能、肌や髪の健康にも関係している大切な栄養素です。
こころとからだの健康のために、亜鉛は毎日とりたい栄養素だといえるでしょう。この機会に亜鉛を多く含む食品を意識して食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
毎日の食事でバランスよく栄養をとれていない方や、亜鉛の摂取量に不安がある方はかかりつけの医師に相談してみましょう。
これからも元気に、前向きに過ごしていくためのヒントになれば幸いです。

(参考文献)
※1)Vashum KP, et al. J Affect Disord. 2014 ; 166:249-57
※2)Nowak G, et al. Pol J Pharmacol, 2003; 55: 1143-7
※3)Lai, J. et al. J Affect Disord. 2012; 136(1-2):e31-e39.
※4)Miki T,et al. Nutrition. 2015; 31(5):686-90.
※5)西 大輔. セロトニン(厚生労働省e-ヘルスネット)2021.1.22
※6)Sharma P, et al. Biol Trace Elem Res. 2021 Sep;199 :3213-3221