お役立ちコラム
こころとからだの健康に深く関わる食物繊維
~炭水化物の役割 ②~更新日:2024/05/08
炭水化物は消化・吸収される「糖質」と消化・吸収されない「食物繊維」に分けられます。前回は「糖質」について取りあげました。今回は「食物繊維」について取りあげます。
食物繊維は水に溶けやすい水溶性食物繊維と水に溶けにくい不溶性食物繊維があります。どちらもヒトの消化酵素で消化されず体内に吸収されませんが、私たちのこころとからだの健康に大きくかかわっています。
食物繊維の種類とからだの働き
水溶性食物繊維は、水に溶けるとゼリー状になり、一緒に摂取した食品の胃での滞留時間を長くします。さらに小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、食品中のコレステロールを吸着し体外に排出されやすくすることで、糖尿病、脂質異常症、高血圧、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病の予防に役立ちます。
水に溶けにくい不溶性食物繊維は水分を吸収して便の量を増やします。そして、腸を刺激して腸の動きを盛んにし、便の排泄を促します。また、不要なものを吸着させて、便と一緒に排出する働きもあります。これらの作用は便秘や腸の病気の予防に役立ちます。
「発酵性食物繊維」と腸内細菌とからだの健康
食物繊維の中でも今、注目されているのが「発酵性食物繊維」です。
腸内細菌によって「発酵性食物繊維」から短鎖脂肪酸が産生されます。この短鎖脂肪酸は腸内環境を整える働きがあります。
大腸には約1000種類、100兆個にもおよぶ腸内細菌が生息しています。大きく分類して善玉菌と悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌とよばれる中間の菌の3グループが種類ごとにテリトリーを作っています。多様な腸内細菌で構築された腸内細菌の集団は、花畑に例えて「腸内フローラ」とも呼ばれます。腸内フローラは食中毒菌や病原菌による感染の予防や、体の免疫機能を高める効果など、さまざまな面でからだの健康に関わっています。
こころの健康にもかかせない食物繊維
緊張状態からお腹が痛くなったり、ゆるくなったりした経験はありませんか。腸と脳は相互に情報交換をしており、この関係は「脳腸相関」と呼ばれています。この情報交換にも腸内細菌が大きな影響を与えているのです。腸内環境の悪化は、イライラや気持ちの落ち込みなどのこころの不調、うつ症状を引き起こすことにもつながります。こころの健康を保つためにも食物繊維を摂り、良好な腸内環境を保つことが大切です。
日本人の食物繊維の摂取量は減少している
こころとからだの健康に役立つ食物繊維。1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、食生活の変化に伴い摂取量が減ってきています。厚生労働省が定めている日本人の食事摂取基準(2020年版)では、実現可能な量の目標量と生活習慣病の発症予防や重症化予防のための理想的な目標量が示されています。
食物繊維を暮らしにプラスしましょう!
日本人の食物繊維の摂取源の内訳をみると一番多いのが穀類(特にお米)、次に野菜類です。不規則な食生活や外食が続く食生活、加工食品に頼った食生活では特に食物繊維が不足しがちです。手軽に食物繊維がとれる豆類や野菜類、果物類を常備しましょう。